研究概要 |
次世代のシークエンスとして期待されているナノポア付近のDNAの泳動を観測し、その物理的状況を調べた。ポアは、SiN(200 nm)の径100 nm程度で、SiNポアへの通過のパラメータ(電位差、イオン濃度)やポアの表面修飾(有機分子、金蒸着)、ポアのFET化(SiN-Au-SiO2)による泳動の違いを調べ、ポア付近の電場、流れ、DNAの詰まりやすさについて評価した。SiNポア付近では静電場のみで、その電場を定量的に3Dで求め、等位面が球対称であることをを2012年11月にACS Nano 2012,6,10090-7に発表した。その論文においてDNAのつまりについて、ポアの径、膜間電位差による頻度の違い、ナノポア付近の動的流れの存在を示唆した。イオン溶液内表面電位の遮蔽イオンが電場により動くことに起因するオズモシス流がこの現象に深く関わっているので、その研究を年度後半の課題の中心に置いた。オズモシス流の発生とその影響を定量化するために、①ナノポア膜表面を金蒸着し、その膜電位を制御し、また②金蒸着後に更にSiOをスパッタし、ポア内の表面電位のみ制御し、DNAの泳動の変化を観測した。①では有機分子修飾と同様にDNAのナノポア通過の頻度が激減し、①、②共にDNAのポアへの動きは球対称性ではなく、表面付近からポアに向かう頻度が激減した。また、これらの挙動にもオズモシス流の影響が観られた。そこで、最終年度はDNAのオズモシス流含むダイナミクスのシミュレーションを行い、実際の挙動との比較を行った。詰まったDNAをSiN-Au-SiO2ポアから取り除くパラメーターを決定した。膜間電圧-0.3V、Auに矩形波Vpp = 0.8V、20HzのACで、ほぼ100%の詰まったDNAの除去ができた。最後に超音波での詰まったDNA除去を目的とし、超音波の局所的発生の装置を作製し、細胞への影響を観た。
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