本研究は、医薬品開発段階における動物実験削減を目指し、「BODY ON-A-CHIP」をコンセプトにヒトの主要な臓器の細胞をマイクロ流体デバイス内に集積化し、化学物質などの入力に対して臓器間相互作用を考慮した出力の分析が可能なプラットフォームの実現を目標としている。今年度は、プラットフォームの基礎となるADME(吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)、排泄(Excretion))機能を統合したマイクロ流体デバイスの設計と製作、及び基礎的な性能評価を実施した。開発したデバイスは多孔膜で仕切られた上下二層の流路構造から構成されており、多孔膜上で小腸膜モデルを形成することによって生体内の吸収機能を再現することが可能である。小腸膜で吸収された化学物質の体内循環を再現するために、生体内コンパートメントである下層流路は、生理的な流体ネットワークとなるように各臓器細胞培養部や微小流路が設計されている。各臓器細胞培養部では代謝機能を担う肝臓モデル細胞や代謝機能を担う腎臓モデル細胞の培養が可能で有り、実際に本デバイスを用いた培養実験に着手している。分布機能として、回転子を利用したオンチップ型のマイクロポンプの各流路層への集積化も実現しており、すでに送液性能などの基本性能評価が完了している。また、プラットフォームのコアとなる流路構造の製作と平行してデバイスに搭載が可能な、光学的あるいは電気化学的なセンサの開発も進めており一定の成果を得ている。 今年度までにプラットフォームの基盤要素とその集積化はほぼ完了したため、来年度は実際に生体内で起こりうる薬物動態のシナリオを再現することで本デバイスのin vitroモデルとしての機能検討を試みる予定である。
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