単一の細胞や遺伝子情報の解析・評価を可能にするため、微細加工技術を用いて微小反応場を作製し、これに単一細胞を分離・配置し、PCR法などを組み込んだ一細胞・一分子DNAレベルの解析手法を開発・確立させ、単一細胞評価・診断への基盤技術へと発展させることを目的とする。本年度は、微細加工技術に基づいて2種のマイクロチャンバーアレイを作製した。1チャンバーのサイズは、650×650×250μmで、容量は50nLである。PCR酵素量、プライマー濃度、反応時間、温度などオンチップPCR諸条件の検討を行ったところ、従来の酵素量の10倍を添加することで効率よくDNA増幅が行えることがわかった。また、マイクロチャンバーへの一細胞配置を、ナノピンセットを用いたマニピュレーションにより行うことで可能であった。マイクロチャンバーへのPCR溶液の導入は、ナノリッターディスペンサーを用いることで迅速、正確、均一に導入できた。チャンバーチップ上にあらかじめミネラルオイルを積層しておくことで、ディスペンサーから吐出されたPCR溶液が、オイル層を貫通してチャンバー内に導入され、蒸発を防ぐこともできる。胎児由来有核赤血球をマイクロチャンバーに配置し、血液型判定に用いられる遺伝子マーカーのRhD DNAの増幅も可能であった。オンチップRT-PCRへの適用も想定し、条件検討を行った。その結果、逆転写酵素量1倍に対してPCR酵素量を10倍にすることで、RNAからのDNA増幅の計測が行えることがわかった。また、1ステップRT-PCRだけでなく、汎用的な2ステップRT-PCRを行えるよう、2段構造のマイクロチャンバーアレイも設計作製した。
|