寄生虫感染症であるマラリアの診断方法としては、血球細胞の顕微鏡観察が主流であり、その他にPCR法やイムノクロマト法があるが、感度、検出時間、操作性に問題がある。本研究では、既存の診断法では不可能であった自覚症状のない段階での極めて早期に、高感度、短時間に診断するため、100万個以上の赤血球を均一に配置し、その中から、マラリア感染赤血球を迅速かつ高感度に検出できる超集積型の細胞チップの開発を目標とする。本研究目標を達成するために、本年度は、まず多数の赤血球をマイクロアレイ上に均一に配置できる細胞チップを設計し、一枚のチップ上で100万個の赤血球を同時に解析できるシステムの開発を進めた。細胞チップは、ナノリソグラフィー技術であるLIGAプロセスを用いて、直径100μmのマイクロチャンバーが約2万個集積化されたポリスチレン製マイクロアレイチップを作製した。さらに、細胞チップの表面を、反応性イオンエッチング(RIE)装置を用いて親水化処理を行い、チップデザイン、赤血球濃度などの条件と併せて、赤血球の配置条件の最適化を行った。その結果、1枚のチップ上で、100万個以上の赤血球を均一かつ単一層に配置することに成功した。それによって、100万個の赤血球をマイクロアレイスキャナー等によって約15分程度で検出可能となるため、ハイスループットスクリーニング系としてマラリアの迅速診断法になり得ることが期待される。来年度(23年度)は、最適化された細胞チップを用いて、従来法(顕微鏡、イムノクロマト法)の検出限界(1万個に1個、0.01%)をはるかに超える100万個に1個(0.0001%)以下といった極少数のマラリア感染赤血球を検出および解析できるシステムの構築を目指す。
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