研究課題
寄生虫感染症であるマラリアの診断方法としては、血球細胞の顕微鏡観察が主流であり、その他にPCR法やイムノクロマト法があるが、感度、検出時間、操作性に問題がある。本研究では、既存の診断法では不可能であった自覚症状のない段階(100万個に1個レベル以下のマラリア感染赤血球)での極めて早期に、高感度、短時間に診断するため、100万個以上の赤血球を均一に配置し、その中から、マラリア感染赤血球を迅速かつ高感度に検出できる高集積型の細胞チップの開発を目標とする。本研究目標を達成するために、昨年度は、直径100μmのマイクロチャンバーが約2万個集積化されたポリスチレン製マイクロアレイチップを作製し、細胞チップのデザインやチップ表面の親水化処理条件を検討することによって、1枚のチップ上で、100万個以上の赤血球を均一かつ単一層に配置することに成功した。本年度は、本細胞チップを用いて、1枚のチップで単一層化された270万個の赤血球中から1個のマラリア感染赤血球を15分間で検出することに成功した。それによって、従来法であるPCR法の5倍以上、顕微鏡観察やイムノクロマト法の100倍以上の超高感度検出でありながら、簡易、迅速なマラリア診断方法の構築を実現した。さらに、細胞チップ上で、標的のマラリア感染赤血球のギムザ染色等も行うこともできたことから、検出後の詳細な解析も可能であることが示された。将来、既存法に置き換わる新しいマラリアの早期診断法として期待されるため、今後、企業などと共同研究を進めながら製品化に繋げていきたいと考えている。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
PloS One
巻: 7 ページ: e32370
DOI:10.1371/journal.pone.0032370
J. Phys. Conf. Ser.
巻: 352 ページ: 12041
DOI:10.1088/1742-6596/352/1/012041
Analyst
巻: 136 ページ: 2247-2251
DOI:10.1039/c0an01044h