診療現場での癌など各種疾患の早期診断を目指して、既存の大型で高価なセルソーターを利用せず、小型化が容易な遠心力による送液と簡便な微小分割による細胞単離を組み合わせ、正常細胞群に僅かに混在する病変細胞高感度に検出可能な一細胞PCR用ディスクの開発を行った。昨年度までの成果として、微小流路により全てのマイクロウェルを連結し、逐次、細胞懸濁液を分配していく構造を用いて、特に最後の1滴までとなる極微量の溶液量であっても送液可能な遠心力を利用することにより、試料中に含まれる細胞を高い収率で単離できるディスク型のマイクロデバイスを開発していた。そこで本年度は、個々に単離された細胞のアッセイには、変異配列等の標的遺伝子を高い選択性で検出できるリアルタイムPCR法を利用することとし、開発するディスク上で単離後、そのままマイクロウェル中でPCRすることで、個々のマイクロウェルの蛍光強度変化から標的遺伝子を有する細胞を定量可能とした。具体的には、ヒトTリンパ腫細胞であるJurkat cellの遺伝子を標的とし、リアルタイムPCRによる蛍光強度変化を、蛍光顕微鏡や蛍光イメージスキャナーにより計測することで、PCRにより18S rDNAを増幅できることを確認した。さらに、マイクロウェル集積化ディスク上で単離された細胞数と、リアルタイムPCR後の蛍光増幅したマイクロウェル数が同じポアソン分布に従うことを確認し、単一細胞からPCRされたことが明らかとなり、研究成果を国際誌に1件報告した。
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