前年度開発した、エレクトロマイグレーション自己破断接合法による1ナノメートルサイズの電極ギャップ作製技術を応用し、面内型ゲーティングナノポアを作製した。この新規ナノ構造は、ナノメートルスケールの流路と、その中に組み込まれた電極ギャップで構成される。面内ゲーティングナノポアを用いたナノ電極間の電流計測により、生体分子の単一分子識別を実証した。 一方、面内型ゲーティングナノポア構造を応用し、電極組込み型ナノ流路デバイスを作製した。このデバイスを用いて、流路を泳動する単二分子を、埋め込み電極間に印加する電圧により生じる静電場で制御することを試みた。その結果、ナノ流路を1方向に泳動する負に帯電した分子は、埋め込み電極間の静電場の影響により、カソード電極表面に引き寄せられ、泳動速度が大きく低下することを明らかにした。以上の結果は、電極間に架橋した分子の配向・形状を静電場で制御するタイプの静電応力駆動型単分子スイッチを設計する上での指針となる。 更に今年度は、ナノヒータ組込み型ナノ加工機械的破断接合を開発し、通電時に生じるAu単原子接点における散逸熱を評価した。その結果、準バリスティックにAu単原子接点を伝導するホットエレクトロンによるエネルギー散逸のため、電流の下流側においてホットスポットが生じることを明らかにした。本技術は、静電駆動型単一分子スイッチにおける最適なスイッチング性能をもたらす外部温度環境を検証する上での有用な実験基盤となることで、今後の単分子コンフィギュレーションスイッチの研究開発に活用されることが期待される。
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