有機薄膜太陽電池は、真空プロセス等の製造コスト高の要因を削減でき、容易な大面積化の可能性もあり、その他のSi系太陽電池等に比べて大幅なコストダウンが期待できる。ただし、現状ではその変換効率は報告されている最高値でも8%程度しかない、寿命が短い、といった課題があり、その実用化は難しい。本研究では、有機半導体薄膜内でのp-n界面の配向制御をナノスケールで実現することにより、将来的には有機薄膜太陽電池の大幅な発電効率アップが可能な新規薄膜作製手法を探究した。 これまでの研究で高い光電変換効率が得られている有機薄膜太陽電池の薄膜構造は、主にバルクヘテロ型である。ただし、理論的にはこのバルクヘテロ型が最も適した構造とは言えない。本研究では、有機半導体のp-n界面の配向制御をナノスケールで実現することにより、バルクヘテロ型に代わる新規薄膜構造の作製を目指した。 ポーラスアルミナ構造をテンプレートに用いた電解重合により、高分子ナノロッドの合成を試みた。さらに、この高分子ナノロッド単体を基板上に取り出し、その電気特性を測定したところ、テンプレートサイズが小さい程、導電率が向上することが分かった。すなわち、テンプレートサイズをナノオーダまで縮小することにより、高分子配向制御の可能性を示唆する結果が得られた。これらの結果を応用することにより、高分子が基板垂直方向に配向した有機薄膜太陽電池の実現が可能である。 今後はさらに研究を進め、実際に合成された高分子ナノロッドを用いて有機薄膜太陽電池を作成・評価し、有機薄膜内部で形成されるナノ構造の解析およびp-n界面制御の可能性を追求する。
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