本研究課題は未探索周波数領域であるテラヘルツ波に対する、高感度かつ高温動作可能な検出素子を、カーボンナノチューブ(CNT)を用いた2重量子ドットを用いることで、その実現を目指す物である。 研究最終年度に当たる本年度は、前年度に引き続き、2重量子ドットの試料作製プロセスの確立を目標に研究を行った。本研究課題で必要となる、カーボンナノチューブ中に導入するポテンシャル障壁は、制御性の良い電子線を、カーボンナノチューブへと直接照射する事により行った。これは、ノックオン欠陥を導入するような、高エネルギー線だけではなく、電子線描画装置・SEM等に用いられる1~50kVの様な低エネルギー線によっても、CNT自体の結合を切断する事により、任意の抵抗値のポテンシャル障壁を導入する事ができる。単一の半導体的カーボンナノチューブ量子ドットを作製した後、電子線照射と電気伝導度測定を繰り返し行い、量子化抵抗値以上の抵抗上昇を確認した後に、2重量子ドットとしての伝導測定・テラヘルツ検出測定を行った。この研究では、カーボンナノチューブ・金属界面に自然形成されるショットキー障壁ではなく、制御性の良いALD被膜によるHfO_2膜によるポテンシャル障壁を、各々の量子ドットの電流入射・射出側として用いることを試みているが、近年SiO_2膜とHfO_2膜の間には、その層間に固定電荷が形成されることが知られてきている。本研究課題でも、HfO_2膜を堆積した、FET素子を作製し、その基本的動作特性を観測し、研究成果として発表を行った。
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