研究概要 |
前年度までに実験によって得られたチーム協調データを整理・分析し,相互信念の概念を導入することによって,3層からなるチーム認知モデルを構築,完成した.提案モデルは,チーム協調実験での発話データをモデルベースの分析によって説明することによって,妥当性の検証を行い,論文としてまとめ,国際雑誌に投稿,採択された(Theoretical Issues in Ergonomics Science,iFast Content:DOI:10.1080/1464536X.2011.573010).この論文ではモデル提案に合わせて,モデルベースの発話項目分類とそれを用いた発話分析手法の開発,提案も行った.人間の高度なチーム協調のメカニズムを認知モデルのレベルで説明したことがこのモデルの新規性,意義である. チーム認知モデル開発に追加して,提案モデルの計算機モデルとしての実装を行い,二人組チームによる共有状況認識(shared situation awareness)獲得におけるコミュニケーションを例題としたシミュレーション開発も行った.コミュニケーションにおける様々なモデルパラメータを変化させてシミュレーションを行った結果,相互信念の共有状況認識獲得への寄与や,チームメイトへの依存性によるチーム構成デザインに関する新しい知見が得られた.本シミュレーションの成果は現在,国際雑誌への投稿を準備中である.実験では実施,統制が難しい認知パラメータを変化させた影響分析を可能にしたことが,本シミュレーションの新規性,意義である. さらに当該年度においては,人間の認知行動分析手法である認知タスク分析(CTA)を行うエージェント(CTAエージェント)の開発を新たに行った.CTAエージェントは認知タスク分析手法の一つであるCritical Decision Methodに沿ったインタビューを自動で行う対話エージェントで,被験者実験を行うことで有効性の検証を行った。本CTAエージェントに関する成果は現在,学会論文誌への投稿を準備中である。これまでCTAエージェントという類は開発されておらず,また人が行うしかなかった認知タスク分析を効率的に実施できる可能性を示唆したことが本CTAの意義である.
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