研究課題
本研究の目的は、様々な形式で表現された最適化問題に対するモデリングツールを開発することである。平成24年度は次の研究を行なった。(1)多様化・高度化する金融数値計算・数式処理の分野におけるニーズに答えるため、今まで別々のシステムとしてしか存在していなかった金融数値計算と数式処理を統合したインフラを開発した。開発したQuantOnlineは、インターネットを利用した簡単なモデリングによりオンラインで計算が可能となっていることが最大の特徴である。その内部では、金融数値計算のベースに実務でも数多くの企業で採用されているライブラリを収録した“QuantLib”を使用し、数式処理のベースに汎用数式処理システム“Maxima”を使用している。開発したシステムを一般公開し実際にシステムを使用したユーザよりフィードバックをもらうことで、「研究の目指した成果を得ることができた部分」「実用的な機能としては不足している部分」を認識することができた。システムの統合は困難なプロセスであったが、数多くのシステムを統合することで新たな価値の創造を行うことができた。(2)条件数に関する制約を含んだ行列近似問題を効率良く解くアルゴリズムの開発に成功した。条件数を考慮した最適化を行なっているため、安定性のあるロバストな制御が可能となる。また、本手法は従来の手法に対し数千倍から数十万倍高速に解くことができるため、リアルタイム処理にも適している。この問題は非常に基本的かつ実務的であり、欠損値を内包した気象データに対する統計分析など、多くの工学分野に応用することができる。これらの成果を専門分野の研究者に紹介し、学術交流を通じてその意義を明らかにするため、2本の査読付き論文と2本のテクニカルレポートにまとめた。
2: おおむね順調に進展している
実務上重要である金融分野において、金融数値計算と数式処理を統合したインフラの開発に成功した。開発したQuantOnlineによって、インターネットを経由して簡単なモデリングをすることによって、オンラインで計算することが可能となった。
ポートフォリオ選択問題などの応用問題の最適解を出来るだけ短時間で求めるため,効率的に実行できるような構造を持った最適化問題へ帰着させることを目指す.この目的のため、アルゴリズムのみならず実行するときの使用ライブラリや計算機のアーキテクチャにも大きく依存する計算時間を精密に見積もる。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件)
Pacific Journal of Optimization
巻: 8 ページ: 699-724
ACM transactions on Mathematical Software
巻: 39 ページ: Ariticle No.6
Technical Report, Department of Industrial Engineering and Management, Tokyo Institute of Technology
巻: なし
科研費シンポジウム 情報化ネットワーク社会に向けた高度な専門的数理技術ライブラリの研究と開発 予稿集
巻: なし ページ: 32-36