本研究の目的は、様々な形式で表現された最適化問題に対するモデリングツールを開発することである。平成25年度は次の研究を行なった。 (1) 様々な現実問題に対し、それを効率良く解くためのモデル化とアルゴリズムの開発を行なった。具体的には、汎用的な労働条件を考慮したスタッフスケジューリング問題(勤務シフトや作業分担を決定する問題)のモデル化と、問題の適切な分割法や発見的解法の提案を行なった。また、大規模な商品推薦問題のモデル化を行い、確率的劣勾配を適用とデータ構造までを考慮した実装を行なった。さらに、年金に対する超長期の資産配分問題を現実的な計算時間で解くためのモデル化と擬似焼きなまし法の実装を行ない、日本の国民年金を例にシミュレーションを行なった。 (2) 幾つかの汎用問題に対する最適化アルゴリズムの開発と数値実験による評価を行なった。具体的には、まず正定値補完を利用した内点法を近年主流となっているマルチコアCPU上で効率よく計算するアルゴリズムを開発実装し、マニュアルを整備した上でインターネット上で公開した。次に、粒子群最適化(Particle Swarm Optimization)に Nelder-Mead algorithmを導入することにより、幾つかのタイプの非線形最適化問題や組合せ最適化を効率良く解くことに成功した。さらに、前年度に開発した条件数に関する制約を含んだ行列近似問題を効率良く解くアルゴリズムを拡張し、様々な条件を含んだ行列近似問題までを解くことに成功した。 (3) これらの成果を専門分野の研究者に紹介し、学術交流を通じてその意義を明らかにするため、4本の査読付き論文を発表し、3本の論文を投稿中である。また、2件の国際学会での発表と6件の国内学会での発表を行なった。
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