研究概要 |
1.関連研究のサーベイ:特に,a)近年のファイナンス分野におけるSDFアプローチを用いた非完備市場下でのオプション評価問題に関する研究;およびb)リアル・オプション分野における参入・撤退オプション問題に関する最新の研究成果をレビューした. 2.モデルの定式化および最適性条件の導出:まず,非完備市場下での参入・撤退オプション問題を定式化した.具体的には,無裁定原理に基づいて参入・撤退オプションの価格を求める問題(無裁定価格問題)を確率インパルス問題として定式化する.次に,このモデルに対して動的計画原理を適用し,最適性条件を一般化相補性問題として導出した. 3.モデルの定性的性質およびメカニズムの解明:まず,提案モデルの枠組において,効用最大化原理に基づいて参入・撤退オプションの収益の変動リスクを資産取引によってヘッジする問題(ポートフォリオ問題)を考え,それが上述の無裁定価格問題と双対関係にあることを明らかにした.具体的には,それぞれの問題の最適性条件が等価であることを確認した.次に,変数変換によって,(本来GNCPとして記述される)提案モデルの最適性条件がGCPに帰着させられることを明らかにした.最後に,提案モデルが解析解を持つか否かを検証したが,解析解が求められなかったため,その性質の分析を平成23年度に持ち越すこととした.
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