研究概要 |
本年度は,前年度に構築した施設配置と道路網の頑健性を一体的に評価するモデルを実際の道路網上の施設配置に適用した.まず,つくば市の病院を対象に,施設の位置データ・道路ネットワークデータを用いて,道路距離の下での住民から最も近い施設までの距離と2番目に近い施設までの距離の同時分布を計測した.そして,2つの距離の関係を分析し,最寄り施設が閉鎖された場合や施設に至る道路が閉塞した場合の施設までの距離の増分が,都市内でどのように分布しているのかを明らかにした.さらに,得られた同時分布を格子状配置・ランダム配置に対する直線距離・直交距離の下での同時分布と比較することで,実際の配置の頑健性を評価した.次に,移動途中にサービスを利用するようなフロー需要型施設について,道路網上で施設に立ち寄るための寄り道距離を求め,一定の寄り道距離で立ち寄り可能な領域を道路網上に図示した.そして,立ち寄り可能領域の形状や大きさを連続平面上でのモデル分析の結果と比較し,モデルがある程度,現実に適用できることを確認した.以上の研究成果は,不確実性に強い都市インフラストラクチャーを設計するための基礎資料となる.本研究で構築したモデルを用いれば,これまで個別に評価されていた施設閉鎖・道路閉塞による損失を,施設までの移動距離の増分として同一の枠組みで把握することができる.これにより,施設閉鎖と道路閉塞が同時に起こった場合の評価や両者の損失の大きさの比較が可能になった.このように,本研究のモデルは既存のモデルに比べて汎用性の高いものとなっている.
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