近年,産業や学術の様々な問題が整数計画問題として定式化できることが認識されるようになり,大規模かつ複雑な整数計画問題を効率良く解くアルゴリズムの開発が求められている.しかし,整数計画問題はNP困難のクラスに属する計算困難な問題であり,これらの問題の厳密な最適解を現実的な計算時間で求めることは非常に困難である. メタ戦略は,近似解法の様々なアイデアを組み合わせることで,探索の集中化と多様化をバランス良く実現する枠組みであり,計算困難な組合せ最適化問題に対する実用的な解法として近年盛んに研究されている.しかし,整数計画問題のような汎用的な組合せ最適化問題では,メタ戦略の性能向上に利用できる特徴的な構造を持たないため,任意の入力データに対して効率良く動作するメタ戦略を開発することは困難であった. 本研究では,予めアルゴリズムを用意するのではなく,入力データからアルゴリズムの性能向上に役立つ構造を発見して,入力データの特徴に応じてアルゴリズムを自動構成する枠組みを提案する.具体的には,任意の入力データに対して適用可能な部品のみで構成されたメタ戦略を雛形として,与えられた入力データの特徴に応じて部品を入れ替える形でアルゴリズムの自動構成を実現する. 本年度は以下の3項目を実施した.(1)整数計画問題に対して補助記憶を利用した高速な局所探索法を開発した.(2)特殊な制約式に対して特徴に応じた近傍操作を適用する手続きを開発した.(3)整数計画問題の制約行列から抽出したグラフ構造を利用して大規模近傍探索を適用する手続きを開発した.
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