研究課題/領域番号 |
22710147
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
滝 聖子 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (50433181)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 経営工学 / 技能伝承 / 作業研究 / 設備管理 |
研究概要 |
本研究では,設備保守・点検作業における熟練技術の伝承を支援するために,各計測手法およびシステムを開発することを目的としている。平成24年度は,以下の2項目を実施した。 (1)力覚機能を有する設備保守・点検作業訓練装置の開発 前年度に開発した熟練技術計測装置で得られた熟練データを用いて,非熟練者用の保守・点検作業訓練装置を開発した。力覚データは,力覚フィードバック装置を用いて体感できるようにすることを試みたが,予備実験等により,微妙な力加減をフィードバックすることが困難なことが明らかになった。そのため,力覚情報を視覚的に教示し,訓練者が自分の力加減と比較しながら訓練することができるようにした。また,液晶シャッター眼鏡等を用いてバーチャルリアリティ(仮想現実感)を実現することを検討したが,予備実験等により,視覚化した力覚情報を正確に把握することができないことと,作業に集中できないことが分かったため,単純なビデオ映像と作業時の機械音のみを教示することとした。そのことによって,視聴覚および力覚情報を教示することを実現し,より現実に近い環境で設備保守・点検作業訓練を行うことを可能にした。この研究の成果は,経営工学国際会議ICIM2012において発表した。 (2)力覚機能を有する設備保守・点検作業教育装置の開発 熟練者は遠隔地に居ながら,力覚フィードバック装置を介して非熟練者の作業中の力覚的情報をリアルタイムに入手し(体感し),非熟練者の作業状況に応じて的確な指導,教育ができるような装置を開発することを目的としていたが,(1)の訓練装置の仕様変更により,熟練者側でも遠隔地の非熟練者の力覚情報を視覚的に入手することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には,当初の予定通り,設備保守・点検作業における熟練技術計測装置の開発を行った。熟練者の作業時の力加減の習得を支援することを目的として,作業内容(視聴覚データおよび力覚データ)を計測することを可能にした。加えて,熟練者の作業時の身体動作を明らかにするために,作業者の身体部位に取り付けたLEDマーカーを複数のCCDカメラから取り込み,画像処理することにより,作業者の身体部位の3次元位置および回転角度を求め,動作を分析する装置を開発した。 2年目は,当初の予定通り,力覚機能を有する設備保守・点検作業訓練装置の開発と力覚機能を有する設備保守・点検作業教育装置の開発を行った。予備実験により,研究計画通りの方法では,研究目的達成が困難なことが明らかになったため,一部に関しては当初の予定と変更をしているが,おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年度として,機械加工企業(本社(岡山県)と製造工場(海外工場)),自動車部品製造企業(本社(岡山県)と製造工場(徳島県)の距離:約150km)をモデルケースとし,開発した設備保守・点検作業支援システムを用いて運用試験を行い,実用化を目指す。これらの企業では,熟練者のいない製造工場内で解決できない問題が生じるたびに,本社から現地工場まで時間と費用をかけて対応に向かっている。本システムを用いることにより,設備保守・点検作業の熟練技能計測,作業訓練,教育を行い,本装置の有効性を証明する。 また,これら研究成果は,国内論文誌および国際会議等において公表する予定である。
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