研究概要 |
駐車場やガレージなどにおいて,今後の車両として期待される燃料電池車や水素燃料車などの車両から水素燃料が漏洩した際の漏洩水素ガスの排気の問題は,水素爆発などのリスク回避の観点から非常に重要なものとなる.本研究では,部分的な開口部を有する空間内で水素が漏洩した際,漏洩した水素を天井近くに設置した水素センサにより検知し,その水素センサからの情報に基づいて漏洩流量を予測して,天井に設けたファンの換気流量を制御して適正に水素ガスを排気する強制換気方法について,数値シミュレーションに基づいて検討した.当初,部分的に開口部を有する空間として,片側の壁が全面開放してある直方体形状を考察したが,この空間は,水素換気時に空間の低い位置を水素が通過し,周囲空気と水素が混合しやすいという問題を孕むことが分かった. そこで,漏洩水素を周囲空気となるべく混合させず,速やかに排気するため,下部に部分的な開口部を有する空間を提案した.水素を排気する天井口は,複数排出口の設置に伴うコストを抑え,漏洩位置の変化にも対応するため,天井の中心に設けた.このような空間形状とすることにより,水素排出制御と同時に取り込まれる外部空気は,低位置の周方向から取り込まれ,天井に向かう流れとなるため,漏洩水素噴流は安定化し,天井に一時滞留した後,天井口より排出される水素ガス経路となる.この空間に基づき,天井近傍に滞留する瞬時水素量のトレンド評価を行い,ハンチングを緩和しながらスムーズに水素を排出できる強制換気制御アルゴリズムを構築した.その結果,種々の漏洩位置および漏洩流量に対して,水素ガスの室内での分散がなく適切な換気制御が実施される,有効な強制換気手法を提案できた.
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