【標準避航操船特性の明確化】International Marine Simulator Forum参加機関(オランダ、ドイツ、韓国、ベトナムなどの海事大学に設置されている操船シミュレータ訓練センター)の協力を得て、それぞれの機関が実施しているシミュレータを用いた避航操船訓練結果を入手し、船舶の発見距離、危険認識距離、避航開始距離等について解析を実施した。船舶の発見距離については、自船付近の船舶航行密度に依存するものの、自船船首方位と相手船船首方位とが成す角には依存しないことが明らかになった。一方、危険認識距離及び避航開始距離については、一般商船の常用速力(12~20ノット程度)の範囲においては、自船船首方位と相手船船首方位とが成す角に依存し、同角度が小さくなる(同航に近くなる)ほど、それらの距離が近くなることが明らかになった。両者の角度が60度(平成23年度に計画している自然発生交通流中のシナリオに相当)では、±σの範囲で、1.8マイルから4.1マイルの範囲で避航を開始していることが明らかになった。この値を基準として、平成23年度実施の実験結果を比較する予定である。 【実験シナリオの作成・計測準備】東京海洋大学練習船汐路丸に乗船し、東京湾沖(洲崎付近)において自然発生している船舶交通流の実態調査を行った。殆どの北上船舶が洲崎付近で東京湾向け変針しているが、ごく稀に変針せず三浦半島方面へ北上している船舶が見受けられた。本実態調査を基に、操船シミュレータ実験のためのシナリオを作成し、予備実験を実施し、船舶発見距離、危険認識距離、避航開始距離及び避航手段等のデータ取得方法並びに解析手法を確立した。 【航行管制業務実態調査の実施】海上保安庁交通部安全課の協力により、来島海峡海上交通センター及び関門海峡海上交通センターにおいて航行管制業務実態調査を実施した。航行安全政策を立案するに当たり、航路管制官に要求される技術について、要素ごとに分類し整理する必要が課題として浮かび上がった。
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