本研究は、震源断層の三次元形状と地下の三次元速度構造という強震動生成に関わる2つの重要な三次元性に着目し、観測された強震波形データから、震源断層の詳細な三次元形状をすべり分布とともに推定する新しい震源過程解析手法を構築することにより、震源断層の三次元形状と三次元地下速度構造と強震動生成機構との関係を解明することを目的としている。平成22年度は震源断層面の三次元的な幾何形状を時空間のすべり分布と同時推定する新しい震源過程解析手法を定式化し、計算機コードを開発した。ここでは、震源断層面の形状を定義するため、control pointにおける走向と傾斜の少数のパラメータをモデルパラメータに追加することで実現した。本手法の妥当性・有効性を確認するため、モデル断層による予測波形を用いたテストを行った後、この手法を2008年岩手・宮城内陸地震の強震記録データセットに実際に適用した。すべりの大きい領域での走向はCMT解に基づく平面断層モデルと似ていた。結果として得られた断層幾何形状の特徴は稠密余震観測による震源分布から見られる震源断層面のイメージと調和的であった。また、三次元速度構造モデルを震源インバージョンに取り込むため、single forceによる理論地震動を差分法で計算するためのコードを整備した。また、地震波干渉法により得られる観測点間グリーン関数を用いて既存の三次元地殻速度構造モデルの検証を開始した。
|