研究概要 |
本研究は,古地図と堆積物を利用した火山活動史構築法の開発を目的とする研究である.噴煙の画かれた古地図のカタログつくりと噴煙の画かれた火山の噴煙史と火山活動史の関係を,地質調査を併用して明らかにする. 本年度は,東日本の古地図および火山地質の調査,特に北海道(蝦夷)の古地図とそれらに噴煙が描かれている火山について行なった.古地図の調査は,デジタルアーカーブとして公開されている各図書館のものについての調査を行った他,函館市立中央図書館,北海道立図書館,札幌市立図書館などの図書館に収蔵されている古地図について閲覧し,それら古地図に記録された情報の記述時期,信憑性や成立過程などの調査のための文献調査もあわせて行なった. 調査の結果明らかになった古地図に噴気・噴煙が描かれた火山は以下のものである,恵山,北海道駒ケ岳,有珠山,渡島(松前)大島,渡島(松前)小島,イワオヌプリ(ニセコ),雄阿寒,雌阿寒,羅臼岳(知床),択捉焼山,茂世路岳.また古地図の成立時期などから,恵山は18~19世紀を通して噴気・噴気活動が活発であったこと,樽前山は同時期噴火活動があったにもかかわらず噴気・噴煙活動が活発でなかったことが明らかとなった.これら,道南の噴気・噴煙が描かれたこれら火山については現地調査を行い,その記述についての信憑性の調査を行った.その結果,渡島小島については,ある古地図に噴気・噴煙の記述があったが,実際に噴気・噴煙が上がっていたかは疑わしいことが明らかになった.その一方,イワオヌプリに関しては,江戸時代の噴火記録や噴気の記録は無いもの,最近まで噴気をあげていたと思われる多数の噴気孔の痕跡や水蒸気爆発テフラなどが発見された.北海道以外には,東日本の江戸幕府勅撰の古地図「国絵図」や伊能図について調査を行い,岩手山,鳥海山などに噴気・噴煙が描かれていることが明らかとなった.江戸期に噴火活動があったことが知られている蔵王火山と日光白根火山についても,予察的な古地図調査及び地質調査を行った.
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