研究課題/領域番号 |
22710174
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
及川 輝樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (10435761)
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キーワード | 火山 / 自然災害 / 地質学 / 古地図 |
研究概要 |
本研究は,古地図と堆積物を利用した火山活動史構築法の開発を目的とする研究である.噴煙の画かれた古地図のカタログつくりを行い,噴煙の描かれた火山の噴煙史と火山活動史の関係を,文献史料及び地質調査を併用して明らかにする.本年度は,中~西日本の古地図および火山地質の調査を新たに行い,それと並行して昨年度調査した北海道(蝦夷)の噴煙の描かれた古地図のカタログつくりとその補足調査を行った.さらに、噴煙の描かれていないが、活動記録のある栗駒火山についても、古記録の調査と伴に、現地調査をおこなった.その結果,九州の火山について噴煙の描かれた古地図のカタログを作成した.さらに,現在活動中の霧島火山については,古地図に描かれた噴煙活動の妥当性を検討するため,文書記録から江戸期の活動のとりまとめも行った.その結果,霧島火山,阿蘇火山には,多くの古地図に噴煙が描かれているが,桜島火山については,ほとんどの古地図に噴煙が描かれていないことが明らかとなった.霧島火山についての成果の一部をまとめて,日本火山学会の学術誌「火山」に論文を投稿した.また,中日本の浅間火山について噴煙の描かれた古地図のカタログつくりを行った結果,19世紀前半に噴煙活動が低調になったことを示唆するような結果が得られた.さらに,活火山として認定されていない,トカラ列島横当島において地質調査を行い,火山活動史を明らかにした.その結果,横当島は新鮮な火山地形をの残し,樹木などの植生に乏しく近年噴火した可能性が高いこと.最後の火山活動は,爆発的でかつ,規模の大きなものであることが判明した.のまた,北海道の江戸期後半の噴煙史古地図のカタログと火山活動史との関係は,日本第四紀学会及び日本火山学会で順次報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
天候や海状不良のため,予定していた時期に野外調査が行なえず,予定してた実施期間内に予定した研究が終了できなかった.そのため,科研費の繰り越し手続きを行い,次年度に計画の一部を実施した.以下にその概要を記す.平成23年度5月までに西日本の横当島の現地調査を行ない、天候不順等でそれが行ない場合、代替調査として10月までに北海道の雄阿寒岳の現地調査を行ない.平成24年3月までに少なくともどちらか一つの火山の古地図に描かれた噴煙と噴火史の関係のケーススタディをまとめる予定であった.しかし,天候や海状況不良で,平成23年度は調査ができなかった.そのため,科研費の一部を繰り越し,平成24年5月に横当島の調査を行った.また栗駒山の調査もおこなった.
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今後の研究の推進方策 |
収集した噴煙の描かれている地図についてカタログ化を進める.また,噴火との関係を霧島火山,桜島火山,浅間火山について引き続き行う.さらに,噴煙の描かれていないが江戸時代に活動したと考えられている,栗駒山,日光白根山などについても江戸時代の噴火史まとめ,噴煙が描かれているものとの対比を行う.本年度調査した横当島に関しては,規模が大きくかつ新鮮な地形面をなす火砕物が発見されたため,次年度に追加現地調査を行う予定である.これらの成果を基に,噴煙の描かれている古地図のカタログ化,描かれた噴煙と噴火などの火山活動の関係,現地調査の結果から,古地図から火山活動を抽出する方法をまとめる.
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