研究概要 |
近年の局地豪雨による突発的な斜面崩壊を未然に予測するためには,従来の監視手法の考え方を改善する必要がある。本研究では,これまでの一箇所集中型の計測ではなく,複数斜面に対し,無線センサネットを用いたローコスト,多点型,情報伝達の高速化を実現した面的な斜面監視が必要であると考えた。集中豪雨による突発的な崩壊の多くは表層崩壊であり,崩壊と表層地盤の水分環境には密接な関係がある。 そこで,衛星リモートセンシングにより,表層地盤の水分環境を解析することで潜在的に危険性の高い斜面を絞込み,対象斜面に対し,土中水分と変状に関する情報を面的に計測できる崩壊予測システムを開発する。本研究目的に対し,H22年度は下記の成果を得た。 1)リモートセンシングによる植生を介した斜面の土壌水分環境の推定分光計を用いた地上リモートセンシングにより,植生(草地)のNDVIと土中の体積含水率の関係を明らかにした。また,同様に植生(草地)のNDVIと植生密度の関係を明らかにした。これらの実験により,植生密度を考慮した体積含水率とNDVIの関係式を提案した。 2)斜面監視のためのセンサノード開発 ・今年度はセンサノードに搭載する土中の体積含水率,水分ポテンシャルの計測が可能な小型センサを入手し,これらの挙動を把握し,本システムへの導入の可能性を検討した.具体的には,室内でのカラム試験おいて,含水比,土の強度などを考慮した実地盤の模擬試験体を製作し,雨水浸透時の土中水分の挙動を把握した。また,実地盤においても同様の浸透挙動を把握することで,室内実験の妥当性を検証した。 ・メッシュ型の無線通信機と上記センサを組み合わせたセンサノードのプロトタイプを製作した。スリープ機能を用いた長期観測の際にセンサノードの通信停止などの障害が起こらないようフリーズ時のリセット機能を持たせた。3年以上の長期連続運用が可能な小型電池パックを開発した。
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