H22年度は近年の地方都市や農山漁村集落における災害復興事例の調査を一部実施した。中越地震の被災地である新潟県十日町市や小千谷市の集落の現状調査およびヒアリングを実施するとともに、行政や復興支援員からのヒアリングも実施し、新潟県中越大震災復興基金が集落再生チームを編成し、各地域の復興塾度を見定めながら各種メニューを構築し、地域の自律的な取り組みを誘導してきた経緯とその効果について実証的に検証することができた。このことは、支援メニューを地域の状況を配慮せずに提示した中越沖地震の復興基金でさほどの効果が上がっていない状況を説明する上でも重要な視点であることが確認できたといえる。また平成5年に発生した北海道南西沖地震の被災地奥尻島での復興調査及びヒアリングを行い、復興には直後の金銭的な支援が短期的な建物再建には機能するものの、その後のまちづくりには負の影響を与える可能性があることが明らかとなった。具体的にはより密度の薄い市街地の形成や、ハード整備による将来的なメンテナンス費用増大の懸念などである。加えて漁業の視点を排除した建物構造が事業の継続性に大きな影響を与えている現状も明らかにした。さらには小千谷市東山地区での人口変化と今後に向けた取り組みについての分析もすすめ、多角的な視点から最終成果を構築するための基礎的な知見を得ることとなった。 なお、これらの成果は各種シンポジウムや学会等での口頭発表を通じて、その方向性に誤りがないかを確認しながらより精緻なものにするための作業を並行して実施している。
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