研究概要 |
近年、質量分析を用いた生体分子のin situマッピング(質量分析イメージング)が盛んに行われている。MALDI法は質量分析イメージングにおいて最も良く用いられるイオン化法であるが、MALDI法自体の持つ欠点(定量性・再現性の悪さ、マトリックスイオンによる妨害)のため、細胞膜脂質や骨格タンパク質など、組織中に圧倒的多量に存在し、かつ分子量が比較的大きな分子群の定性的な分布観察のみにその適用は制限されていた。一方申請代表者は、MALDI法に用いるマトリックスの最適化およびサンプル調製法の最適化を徹底的に行うことで、これまでに、マトリックス支援型レーザー脱離イオン化法(MALDI法)の超高感度化を実現し、微量培養細胞を用いた超高速メタボリック・プロファイリング法(Anal.Chem.(2010) 82, 498-504)および細胞内代謝動態の秒スケール追跡法(Anal.Chem.(2010) 82, 4278-4282)の開発に成功した。さらに、上記技術を質量分析イメージングに応用することで、生命現象の物質的表現型であるメタボロームに時間・空間分解情報を付与し、これまで全くの未知であった生体組織微小領域における代謝ダイナミクスを明らかとした(Anal.Chem.(2010) 82, 9789-9796)。この「単一細胞レベルの検出感度による内在性低分子量代謝物動態の時空間分解可視化」は世界初の成果である。
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