研究概要 |
本研究は葉緑体タンパク質を破壊した約1,300ラインのホモ挿入体を用いて、環境ストレスを与えた時のクロロフィル蛍光を測定し、光合成機能が異常になる植物体の単離を目指すものである。クロロフィル蛍光測定による光合成パラメーターは、個体差が大きいためスクリーニングにより変異体を単離することは極めて困難であるが、ライン化された均一なホモラインリソースの使用によりこれを解決できる。そして得られた変異体がコードする遺伝子の詳細な機能解析を行い、環境ストレスと葉緑体との相互関係を分子レベルで理解することを目的とする。平成22年度においては植物生育プレート中に、(1) 活性酸素発生試薬であるメチルビオロゲン(MV)とAlloxan、(2) NO発生試薬であるニトロプルシッドナトリウム(SNP)、(3) 乾燥応答に関わる植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)、(4) 塩(NaCl)、(5) 強光、によるストレス付加条件下でのスクリーニングを行った。葉緑体タンパク質のホモ挿入体の種子1,290ラインをライン番号順に8個体ずつGMプレート培地中に播種した。植物インキュベータで育てた播種後10日目の芽生えの植物体にCCDカメラによる2次元クロロフィル蛍光測定装置により光合成パラメーターを測定し、パラメーター値(Fo, Fv/Fm, ΦPSII, qP, NPQ, Rfd)が異常な変異体を単離した。一次スクリーニング後、二次スクリーニングを行い、再現性の確認と変異体の絞り込みを行った。さらに遺伝子内の異なる位置にタグが挿入した複数のアレルを用いて表現型の再現性を調べた。その結果最終的に6つの候補変異体が得られた。その内3つの遺伝子は既知の遺伝子であり、残りの3つの遺伝子は機能未知の遺伝子であった。
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