研究概要 |
葉緑体タンパク質を破壊した約1,300ラインのホモ挿入体を育成プレート培地中に播種し、1.活性酸素発生試薬であるメチルビオロゲン(MV)とアロキサン、2.NO発生試薬であるニトロプルシッドナトリウム(SNP)、3.乾燥応答に関わる植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)、4.塩(NaCl)、5.強光、による各種のストレス付加条件下で感受性が異なる変異体を単離するためのスクリーニングを行った。その結果6つの候補変異体が得られ、その内既知の遺伝子を除く2つの遺伝子に関して詳細な機能解析を行った。また通常条件下で2次元クロロフィル蛍光測定装置により光合成パラメーターを測定し、パラメーター値(Fo,Fv/Fm,ΦII,qP,NPQ)が異常な変異体の有無を調べた。得られた変異体は、それらの遺伝子内の異なる位置にタグが挿入した変異体アレルを単離し表現型の再現性を確認した。また変異体に遺伝子を導入して相補性試験を行った。系統的に近縁な遺伝子の変異体を得てストレスへの感受性を調べた。さらに近縁な遺伝子との多重変異体を作出した。タバコの葉で遺伝子を一過的に発現したGFP融合タンパク質の細胞内局在の結果から、葉緑体局在のタンパク質をコードしていることを確認した。遺伝子の発現を向上させた高発現体、遺伝子プロモーター領域とGUSとの融合コンストラクトを導入した植物体、HAとGFPタグとの融合タンパク質を発現させた植物体などの形質転換体を作成した。GUS染色の結果、若い葉とシュート頂分裂組織(shoot apical meristem)で発現が観察され葉緑体の発達の切期に働くことが分かった。葉緑体内局在およびタンパク質発現を調べるために合成ペプチドをウサギに免疫し特異抗体を作製した。本研究により環境ストレスに関わる重要な葉緑体タンパク質を同定し、その機能を分子レベルで明らかにした。
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