これまでに2000以上の疾患に関連する遺伝子が報告されているが、これら疾患関連遺伝子がヒトゲノム上の特定領域に局在しているといった報告はない。ヒトゲノム中には相同組替え率の高い組替えスポットが存在し、また、相同性組替えが突然変異を誘発することが分かっている。そこで本研究では、組替えホットスポットに存在する遺伝子上に疾患の原因となる有害突然変異が多く含まれるかを調査し、相同組替えがゲノムに与える有害な影響の立証を目的とした。疾患突然遺伝子を含むヒト遺伝子を、組替えホットスポット中に存在しているかどうかにより2つに分類し、それぞれの疾患突然変異頻度を求めた(有害突然変異数/1kb)。また、突然変異率は塩基配列のGC含有量の影響を強く受けることが知られているため、GC含有量によって6のグループに細分化した。その結果、どのGC含有量のグループでも組替えホットスポット中に存在する遺伝子は疾患突然変異を多く含むことが明らかとなった。このことは相同組替えが疾患の原因となる有害突然変異を生み出していることを示唆している。組替えホットスポット上に存在する遺伝子は疾患関連遺伝子である傾向が強いかを調査するため、OMIMデータベースより疾患関連遺伝子を取得し、その他の遺伝子と組替えホットスポット上に存在する頻度を比較した。その結果、ヒト疾患関連遺伝子は、他の遺伝子と比較して有意に組替えホットスポット上に存在していることが分かった。このことは、相同組替えが原因となり、遺伝子が疾患関連遺伝子となる確率を上昇させていることを示唆している。
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