日本人に多い脳血管疾患、モヤモヤ病の感受性因子として同定された新規巨大タンパク質ミステリンは、ユビキチンリガーゼ活性とATPアーゼ活性を持つ。しかし、ミステリンの細胞内における機能と、血管組織における機能の詳細、また、疾患原因変異がミステリンの機能にどのような影響をおよぼし、どのような機序で疾患が引き起こされるのか、いずれも現在までほぼ全く不明である。そこで、ミステリンの生理機能を探る目的で、既知の血管関連因子群との物理的・機能的相互作用を検討すると共に、ミステリンと物理的に相互作用するタンパク質群を、LCMSを用いて網羅的に探索した。その結果、ユビキチン関連因子を含む複数のタンパク質を見出した。現在、これらのタンパク質とミステリンの機能的関わりについて、細胞レベルでの解析を進めている。また、二次構造予測からは、ミステリンはAAA+型ATPアーゼであることが示唆された。AAA+型ATPアーゼは、ATPの加水分解と共役して物理的な仕事をする多量体型ATPアーゼである。ミステリンの機能を考える上で、ミステリンが実際にAAA+型ATPアーゼとしてはたらくのかどうか、またその機構はどのようなものかは重要であると考えられた。そこで、現在までにまず全長ミステリンの発現・精製系を確立し、得られた精製標品を用いて、多量体形成の有無やATP加水分解にともなう構造変化の詳細などについて、分子レベルでの解析を進めている。
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