免疫沈降法とMS解析を用いて、ミステリンと物理的に結合する因子の探索を行い、脱ユビキチン化酵素をはじめ、幾つかの因子を同定した。ミステリンがユビキチン化酵素であることから、この脱ユビキチン化酵素とミステリンの物理的結合、機能的相関に焦点をあてて解析を行い、この2つの因子が細胞内で一過的複合体を形成し、機能的に相関することを見出した。ミステリンは血管新生に重要な因子であることが過去のデータから示唆されているので、現在、培養細胞等を用いて、ミステリンと脱ユビキチン化酵素の機能相関が血管新生においてどのような役割をはたしているのか、解析を進めている。 また、全長ミステリンの精製に成功したので、この精製標品を用いて、生化学的、構造生物学的解析を行っている。生成標品の電子顕微鏡観察からは、ミステリンはリング状構造を形成していることが示唆された。これはミステリンを含むAAA+タンパク質の一般的性質と考えられるが、この際、何量体を形成しているのか、またAAA+タンパク質のリング状構造形成はATP結合状態と関連することが知られているが、ミステリンのATP結合活性、ATPアーゼ活性はどのようにこのリング構造形成に関与しているのかについて、引き続き解析を進めている。ミステリンのATPアーゼ活性を変化させる各種変異体において、複合体形成能が変化していることから、ATPの加水分解と密接に関係した複合体(リング状構造)形成が起こっていることが示唆された。
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