研究概要 |
本研究は、転写制御因子の結合認識やクロマチン構造などに大きな影響を与えるDNAのメチル化修飾に着目し、メチル化DNAを部位特異的に改変する為の基礎技術を確立することを目的にしている。まず、DNAのメチル化修飾が全ゲノム上のどこで起きているかを明らかにする技術の開発を試みた。その結果、本期間において、メチル化DNA認識蛋白質キャプチャー法(Methylated DNA binding domain capture, MBD)で濃縮したDNA断片を、次世代シーケンサーであるイルミナ社のSolexa GIIxで解析する方法であるMBD-seq法の確立に成功した。現在までに、ヒト繊維芽細胞やヒト単球細胞などを用いて解析を行い、多くの新規組織特異的DNAメチル化差異領域を見いだし、それらの領域の中に組織特異的な発現を制御していると考えられる領域を見つけ出すことに成功した。今後、MBD-seq法を用いることで、DNA脱メチル化誘導処理後のDNAメチル化状態の変化を全ゲノム領域で解析出来ることが期待出来る。一方、DNA脱メチル化誘導処理として、既知のエピゲノム改変剤である7種類の阻害剤(トリコスタチンA、バルプロ酸、デキサメタゾン、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、ゼブラリン、RG108、5-アザシチジン(5-aza))に着目し、繊維芽細胞でのDNA脱メチル化作用について検討した。MBD-seqで得られたヒト繊維芽細胞とヒト単球細胞のメチル化DNA領域の解析結果から、単球細胞で特異的にDNA脱メチル化している領域30カ所を選び、阻害剤で処理をした繊維芽細胞でそれらの領域にDNA脱メチル化変化が起きているかを検討した。その結果、5-azaが最も多くの領域においてDNA脱メチル化を誘導出来ることが明らかになった。
|