研究概要 |
本研究の目的は、転写制御因子の結合認識やクロマチン構造などに大きな影響を与えるDNAのメチル化修飾に着目し、メチル化DNAを部位特異的に改変する為の基礎技術を確立することであった。研究代表者ば、昨年度、メチル化DNA認識蛋白質キャプチャー法(Methylated DNA binding domain capture,MBD)で濃縮したDNA断片を、次世代シーケンサーであるイルミナ社のSolexa GIIxで解析する方法であるMBD-seq法の確立に成功した。本年度において、MBD-seq法で得られた結果を詳細に解析したところ、ヒト繊維芽細胞やヒト単球細胞などで、多くの新規組織特異的DNAメチル化差異領域を見いだし、それらの領域の中に組織特異的な発現を制御していると考えられる領域を見つけ出すことに成功した。また、蛋白質コード遺伝子のプロモーター領域だけではなく、ノンコーディングRNAの発現調節を行っている可能性を示す結果が得られ、メチル化DNAを部位特異的に改変する為に重要な知見を得た。一方、研究代表者は、これらの解析の結果得られた任意の領域が、近傍の遺伝子発現に対する影響を検証する新規の実験手法が必要であると考え、哺乳動物細胞発現ベクターを改変した解析手法を開発した。この方法が有効であることを示す為に、研究代表者は、レポーター遺伝子としてのVENUSと強い発現を誘導するCAGプロモーターを用い、293T細胞で実験を行った。CAGプロモーターに酵素的にメチル化修飾を加え、哺乳動物細胞発現ベクターをin vitroで再構築し、293T細胞への導入実験を行ったところ、下流のVENUS遺伝子の発現が抑制されることが観察された。さらに、この状態は細胞の培養を続けても持続することが示された。さらに、DNAメチル化阻害剤である5-アザシチジンで処理をするとVENUSの発現が観察されたことから、任意の領域のDNAメチル化領域に対する脱メチル化誘導を観察する為の新規技術の作製に成功した。
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