研究課題
膜タンパク質は生体外シグナルの最初の窓口であるため、膜タンパク質の機能解析は様々な生体反応の研究において大変重要な課題である。なかでもチャネルやトランスポーターなどの膜輸送体は、5大疾病をはじめ多くの疾病に関与する膜タンパク質であるほか、高等植物においては成長・細胞の増殖・気孔の開閉調節を担い耐塩性関連タンパク質として機能するなど、医学的・農学的に注目されている。このように膜タンパク質は生物化学分野において重要な研究対象であるが、生体膜上に存在して疎水性が高いという性質ゆえに発現および精製が困難であり、解析が遅れがちであった。以上を踏まえ本研究では、好熱菌由来の膜電位依存性K^+チャネル(KvAP)および大腸菌由来K^+輸送体(Kup)を解析対象として無細胞合成および機能解析を行い、膜輸送体の生体内機能の解明を図った。好熱菌由来KvAPの膜電位センサーの組込み様式について、ウサギ網状赤血球由来蛋白質合成系およびイヌ膵臓由来の粗面小胞体を用いたin vitro解析を行った結果、KvAP S4にはN末端側を小胞体内腔へトランスロケートさせる活性(SA-I活性)が見出された。しかし、KvAP S4のSA-I活性は比較的弱いものであったため、S4およびS3の正常な組込みには、S3-S4間のループ長が短いことおよび静電相互作用の寄与が必要なことが示唆された。大腸菌由来Kupの各疎水領域のC末端側にアルカリフォスファターゼ(PhoA)接続したPhoA融合Kupを作成し、大腸菌発現系を用いて膜貫通構造の解明を行った結果、Kupは12回膜貫通構造から成ることが分かった。また、KupのK輸送機能活性には、少なくともN末端から第7疎水部位までの領域が必須であることが分かった。以上の成果より、膜電位依存性K^+チャネルおよびK^+輸送体の構造形成過程および機能部位を明らかにすることができた。
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化学と生物
巻: 50 ページ: 86-92