平成22年度においては、まずヒト・マイクロRNA(miRNA)に特異的に結合する特殊環状ペプチド(非天然アミノ酸を含む環状ペプチド)をmRNAディスプレイ法によって探索するための環状ペプチドライブラリの構築を行い、環化したペプチドの試験管内翻訳が問題なく出来ていることを確認した。さらに、let-7a前駆体およびmiR-21前駆体を試験管内転写合成し、これをストレプトアビジン磁気ビーズに固定化して、特異的に結合するペプチドの探索を開始した。しかしながら、現在のところセレクション・サイクルを10サイクル程度継続してもmiRNA前駆体に特異的に結合するペプチド配列は得られていない状況である。結合ペプチド配列が得られない理由としては、ターゲットとなるmiRNA前駆体に対して、ペプチド自体ではなくペプチドの鋳型となるcDNAが相補的な配列を持つ部分を介して結合してしまうためであると考えられ、今後このような結合様式を介して回収されるcDNA画分を減らす工夫が必要になると考えられる。そのために、ペプチド鎖中にFLAGタグやビオチンタグなどを導入し、翻訳されたペプチド/mRNA複合体をいったん精製した後にセレクションに用いるなどの手法を検討中である。 また、miRNA前駆体だけでなく、miRNA前駆体結合タンパク質lin28に作用するペプチドの探索についても開始した。His-tagを持つlin28をHis-tag固定化用の磁気ビーズに結合させ、環状ペプチドライブラリと混合して特異的に結合するペプチドの探索を進めている状況である。
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