本研究では、植物が生産する生理活性物質であるプレニル化クマリン生合成の生化学・分子生物学的機構の全容解明を目指しており、その第一段階として組織特異的に蓄積するプレニル化クマリンの生合成に着目して、この生合成酵素の単離、機能解析を行うこととした。本年度は、クマリンを高生産すると報告されている柑橘類におけるプレニル化クマリンの組織別蓄積量を解析し、クマリン特異的プレニル基転移酵素をコードする遺伝子のクローニングを目指して研究を行った。研究は、以下のように予定通り進行している。1、プレニル化クマリンの組織別蓄積量の解析ユズ、カボス、レモン、グレープフルーツ、ライムいずれの場合においても外果皮特異的にプレニル化化合物の蓄積が確認された。2、クマリン特異的プレニル基転移酵素遺伝子のクローニングプレニル化クマリンが高生産される外果皮からRNAを抽出し、プレニル基転移酵素をコードする候補遺伝子をミカン科から4種類、完全長cDNAを単離することに成功した。さらに、得られた遺伝子の組織特異的発現解析を行ったところ、プレニル化クマリンの蓄積パターンと同様、外果皮において高い発現が確認された。その一方で、クマリン含有量が高いセリ科(パセリ、セロリ)からも2種類のプレニル基転移酵素遺伝子の取得にも成功した。レモン由来プレニル基転移酵素においては、酵母発現系による組換え酵素を作成し、その機能解析を行った。なお、以上の成果は、日本農芸化学会2010年度大会で発表した。
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