本研究では、タンパク質フォールディング研究において、新規に「リアルタイム変性・巻き戻りプロテオリシス法」を提案し、タンパク質の変性・巻き戻り過程の重要部位の同定やそれらの構造物性解析に取り組んだ。 具体的には、変性または巻き戻りの非常に遅いTk-RNase HIIを用いて、その変性・巻き戻り過程において、Tk-RNase HIIを非常に安定なプロテアーゼであるTk-サチライシンによって限定分解し、断片を電気泳動により分離し(長さ確認)、また分離した断片のマススペクトル測定・N末端アミノ酸配列決定を行い、切断箇所を同定した。限定分解には、Tk-RNase HIIとTk-サチライシンの量、反応時間・温度などを調整し、最適条件を導くことで成し得ることが出来た。構造を形成していない部位からプロテアーゼによって分解が進むので、分解された部位、分解されなかった部位を同定することで、Tk-RNase HIIがどういった過程で変性・巻き戻りをしているのかに関する知見を得ることができた。 また、同定した断片について、実際に遺伝子操作により、ポリペプチドを合成し、それらの構造物性を測定した。速く分解される部位のポリペプチドは、やはり不安定で、速く変性した。一方、分解されにくい領域のポリペプチドは、それだけでもしっかりした構造を維持し、変性および巻き戻りに関しても非常に遅い特性を維持していた。これらの結果から、Tk-RNase HIIの遅い変性および巻き戻りの原因となる部位の特定をすることが出来た。
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