研究概要 |
本研究ではこれまで研究代表者らが発見した、植物由来の糖鎖伸長型の糖転移酵素について、特徴的な糖鎖伸長活性の分子基盤を明らかにすることを目的とした。本年度は、研究項目のうち、「β1,6-結合を生成する糖鎖伸長酵素の新規分子種の機能解析」および「結晶構造解析に向けた糖鎖伸長酵素の大量発現」を中心に研究を行い、成果を得た。 昨年度、天然でgentiobiose糖鎖をもつ化合物を生合成する、アカネ科クチナシ(crocetin digentiobioside=crocinを生合成)およびセリ科のハマボウフウ(osthenol gentiobiosideを生合成)からアグリコンに対して糖転移活性を有する新規糖転移酵素遺伝子を単離していた。同時に既知の糖鎖伸長酵素と相同性を有する糖転移酵素遺伝子を得ていた。そこで、これらを大腸菌発現系を用いて発現させ、糖鎖伸長活性を測定した。その結果、crocetin glucosideの糖鎖を伸長し、crocetin gentiobioside生成する糖転移酵素(GjUGT99)およびosthenol glucosideの糖鎖を伸長し、osthenol gentiobioside生成する糖転移酵素(G1UGT1)の単離に成功した。これらはアグリコンに対する糖転移活性は有しておらず、qUGT9についてはcrocetin glucosideに対して高い基質特異性を有しており、またgentiobiose以上の糖鎖伸長活性は示さなかった。また、これらの組換え酵素の発現について様々な大腸菌発現用ベクターおよびホストを検討し、大量発現に適した条件を見出した。 これらの結果は、これまで未知であった生合成経路の解明に寄与するだけでなく、今後、合成生物学的手法による有用化合物生産への基盤となるものである。また、gentiobiose糖鎖生成活性を有する新規糖転移酵素の配列情報は、特徴的な糖鎖伸長活性の分子基盤の解明の手がかりとなるものである。
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