低酸素誘導因子(HIF-1)は低酸素応答を制御する転写因子である。多くのがん細胞ではHIF-1が活性化されており、HIF-1の阻害剤は新たなメカニズムによる新規抗がん剤として期待されている。天然有機化合物ストロンギロフォリン類は、HIF-1を標的とした新規抗がん剤のリード化合物として有望であると考えられているものの、現在まで、その合成は報告されておらず、詳細な活性発現機構についても不明である。そこで、天然有機化合物ストロンギロフォリン類のアナログ合成を効率的に行い、構造活性相関や未解明な活性発現機構の情報を得ることにより、HIF-1を標的とした新規抗がん剤創製の研究基盤を確立することを目的とした。 本年度においては、ストロンギロフォリン類の構造的特徴に着目し、容易に入手可能なステロイド化合物であるコレステロールを原料として用いて、ストロンギロフォリン類に特徴的なラクトン構造を有するアナログの合成を行うことを試みた。 まずステロイド骨格のA環部分における官能基化を行った。コレステロール誘導体に対し種々官能基化の検討を行ったところ、四酢酸鉛とヨウ素を用いた反応により、A環部分に存在するメチル基の酸素官能基化が収率良く進行した。その後、ヒドロホウ素化、メチル基の導入、ラクトン化などを経ることによって、目的とするラクトン構造の構築に成功した。このことによって、コレステロールを基とした、ストロンギロフォリン類に特徴的なラクトン構造を有する新規アナログ化合物の合成を行うことができた。
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