COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、断続的な呼吸困難などが長期間続く肺の生活習慣病であり、世界で死亡原因の第4位を占めている。肺胞を司る弾性タンパク質エラスチンの分解物desmosineやその異性体isodesmosineが、症状の進行に伴って生体内濃度が上昇するため、COPDのバイオマーカーとして注目されている。 本研究ではCOPDバイオマーカー診断法の確立を目指し、desmosine及びその類縁体の創製に着手した。標的化合物は、ピリジン環骨格に炭素鎖の異なる4つのアミノ酸が直接結合しているため、ピリジン環に対してアミノ酸を段階的かつ位置選択的に導入する必要がある。そこでまず、ピリジン環とアミノ酸の炭素-炭素結合構築反応として、遷移金属パラジウムを触媒とした根岸クロスカップリングを検討した。モノハロピリジンと、別途合成したキラルなヨードアミノ酸について反応させたところ、ジメチルフォルムアルデヒド中、配位子としてトリフリルフォスフィンを用いた時、最高90%の収率でカップリング体を得ることができた。このように、炭素-炭素結合構築反応の条件最適化に成功した。現在このカップリング反応の条件を用いて、desmosine類の合成へ展開中である。一方、別の合成手法として、ピリジン環と、アセチレンを付与したアミノ酸との薗頭クロスカップリングを鍵反応としてdesmosineの合成研究を検討したところ、13段階・総収率27%で目的のdesmosineの最初の全合成を達成した。このように初年度において、カップリング反応の条件最適化とdesmosineの全合成という重要な成果を挙げることができた。
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