前年度までに、ゼニゴケ由来の4種のセスキテルペン環化酵素様遺伝子(MpSTS1~4)、および3種のジテルペン環化酵素様遺伝子(MpDTS1~3)について全長配列のクローニングが完了しており、これらをGSTとの融合タンパク質として大腸菌で発現させた。MpSTS1およびMpDTS2は可溶化と精製に成功し、それぞれFDPおよびGGDPを基質とした環化産物を同定できた。一方で他の5種類のテルペン環化酵素については、それぞれ発現大腸菌の培養条件等を検討したが、発現量が極端に少ないか、インクルージョンボディとなり、満足な量のリコンビナント酵素を回収するには至らなかった。 当年度はこれを解決するため、新たに宿主大腸菌の検討やHis-TrxおよびHis-Nusタグ等を用いた可溶化の検討を行ったところ、MpSTS2~4およびMpDTS1については小スケールにおいて可溶化に目途がついた。FDPおよびGGDPを基質とした環化産物の同定を行うべく、発現タンパク精製を行ったところ、MpSTS2については十分量の精製リコンビナント酵素を得られたものの、その他については種々検討を行ってもアフィニティカラム精製が機能せず、精製リコンビナント酵素を得るに至らなかった。このため、大腸菌内でFDPまたはGGDPを大量に供給することで、環化産物を直接得ることができる発現系を用いた機能解析に切り替えて検討を進めている。今回新たに得られたMpSTS2についてはFDPを基質とした環化産物のGC-MS分析を行ったところ、主要環化産物として数種のセスキテルペンを生成する多機能酵素であることが明らかとなった。これらの環化産物はゼニゴケ葉状体にも存在することから、現在これらの同定を進めている。また、これまでに得られた精製リコンビナント酵素については、細胞内局在を明らかにすべく、抗体の調製を検討している。
|