前年度に引き続き、モデル実験として4-フルオロトリプトファンのビオチン誘導体を用いた光親和性標識を行った。ビオチン化4-フルオロトリプトファンでアビジンタンパク質を光親和性標識し、ビオチン化アビジンをアビジン-HRPを用いたウェスタンブロット(アビジンブロット)により検出した。その結果、ビオチン化4-フルオロトリプトファンが(共有)結合したアビジンと考えられるバンドが検出されることが明らかになった。そこで、紫外線の照射方法(光源からの距離、時間など)の検討を行い、再現性良く光親和性標識が可能な条件を見出した。 一般的な光反応基であるジアジリンなどをもつ光親和性プローブを用いて光親和性標識を行うと、非特異的な結合がしばしば見られる。そこで、4-フルオロトリプトファンのビオチン誘導体を用いた光親和性標識が、ビオチン―アビジンの相互作用を介したものであるかを調べるために競合実験を行った。過剰なビオチンとインキュベートしたアビジンタンパク質に対し、上記の光親和性標識実験を行った。その結果、ビオチン存在下では、4-フルオロトリプトファンのビオチン誘導体で標識されたバンドは検出されなかった。このことは、4-フルオロトリプトファンを用いた光親和性標識により、特異的に結合するタンパク質を検出することが可能であることを示している。本研究により、4-フルオロトリプトファンを用いた光親和性標識が可能であることが明らかになり、トリプトファン残基をもつペプチドリガンドの受容体決定などに応用されることが期待される。
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