研究課題
全国の主要な湖沼の植生変化を文献記録等に基づきレビューした結果、1980年代後半まではアオコの発生が問題になっていたものの、近年アオコの発生が減少し、代わって浮葉植物であるヒシ属植物が優占する状態にレジームシフトした湖沼として、印旛沼、三方湖、湖山池が認められた。また沈水植物が優占する状態からヒシが優占する状態にレジームシフトした湖沼としては、達古武沼、シラルトロ湖が認められた。これらの湖沼に共通する特徴として、富栄養化が進んでいること、水深が2m未満と浅い部分が大半を占めること、淡水であることが見出された。また印旛沼、三方湖、シラルトロ湖では、定量的なデータはないものの、聞き取り情報や現地調査から、底質のヘドロ化や細砂の堆積が進行している可能性が示唆された。浮葉植物による高密度な群落形成は、大量の枯死体の堆積などを通して、底質のヘドロ化を促進する可能性がある。また底質がヘドロ化した湖沼の低層付近は、光条件が悪く、貧酸素化しやすいため、沈水植物を含む多くの植物の発芽・定着には不敵な環境となることが予測されるが、種子のバイオマスが顕著に大きいヒシ類は、そのような場所でも発芽・定着可能なストレス耐性戦略種である可能性がある。このように、ヒシ類の繁茂はヒシ類以外が生育しにくい環境の創成(正のフィードバック)を通して、一つの安定相(レジーム)を形成する可能性が示唆された。ただし、この仮説の検証のためには、定量的な評価や、モデルの構築・検証実験が必要であり、今後の課題である。上記研究と並行し、霞ヶ浦湖岸の抽水植物帯において、種多様性の維持機構における植物種間のファシリテーションの重要性を証明する野外調査・検証実験を行った。この研究では、適度な人為攪乱(刈り取りや火入れ)が、ファシリテーター植物種の生育を促進し、種多様性の高いレジームの維持に間接的に寄与することが示された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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