研究概要 |
本研究は、生物多様性が豊かな亜熱帯域から天然のミコール酸含有放線菌群を選択分離することで生物多様性を解明し、菌株の保全を行う事を目的としている。23年度は亜熱帯域として沖縄県石垣島および西表島で分離されたミコール酸含有菌の中から新種と推定されるNocardia属およびRhodococcus属について詳細な分類学的な研究を行った。まず、Rhodococcus sp.1540-FN-6R株(NBRC 108552)と1540-FN-20株(NBRC 108555)の16SrRNA遺伝子に基づく系統解析からRhodococcus属の中で独立したクレードを作り、相同性としてはRhodococcus triatomaeと98.2-98.6%であることから近縁種である事がわかった。これら菌株のメナキノン、全菌体糖組成、脂肪酸組成などの化学分類学的性状試験の結果からRhodococcus属である事が同定された。続いて、API ZYM試験や糖の資化性試験において近縁種であるRhodococcus triatomaeと性状が異なることから、これら2株は新種であることが強く示唆された。一方、Nocardia sp.IF2-1株(NBRC 108818)は、16SrRNA遺伝子に基づく系統解析からNocardia pseudovaccinii、Nocardia anaemiae、Nocardia vinaceaとクレードを作り、これら既知種との相同性は98.5-98.9%であった。化学分類学的性状試験ではミコール酸含有菌に特徴的なArabinoseおよびGalactoseが主要な菌体糖成分であり、メナキノンはMK-8(H_4,ω-cycl.)とMK-8(H_2)であり、脂肪酸はC_<16:0>を主要組成としていた。以上のことから、これらミコール酸含有菌が新種であることが強く示唆されたため、NBRCにて菌株を寄託保全した。
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