研究課題/領域番号 |
22710235
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 昌人 京都大学, 総合博物館, 研修員 (60462206)
|
キーワード | 海草藻場 / 集団遺伝学 / 遺伝的多様性 / 保全 / 南西諸島 |
研究概要 |
本研究では南西諸島に分布する熱帯性海草藻場・海草類を対象として、遺伝的多様性の評価・比較に基づく遺伝資源の現状把握、保全に向けたガイドラインの提唱を目的とした集団遺伝学的解析を行っている。本年度は研究対象とした海草類3種(ウミヒルモ、ベニアマモ、リュウキュウアマモ)について沖縄本島周辺の約40の海草藻場でのサンプリングを行い、これらのうち、2種(ベニアマモ、リュウキュウアマモ)の集団遺伝構造の解析を進めた。また、昨年度のデータについても取り纏めを行い、これらの2種がどのような遺伝的特性を持つ種であるかの検討も行った。ベニアマモについてはアロザイム酵素多型解析でほとんど多型が認められず、極めて低い遺伝的多様性を持つ種であることが示唆された。これまでに行われた他の海草類での研究結果と比較しても多型の程度は十分に低く、海草類の中でも限られた遺伝的多様性しか持たない種であることが明らかになった。また、リュウキュウアマモについては、同じくアロザイム酵素多型で比較すると他の海草類の平均と同程度かやや低い遺伝的多様性を持つ種であることが認められた。これらの2種については、遺伝的多様性の評価などはこれまでに行われておらず、本研究の結果はその最初の研究例として意義あるものと考えられた。他方で、DNAレベルの遺伝的多型を検出するAFLPを用いた解析ではいずれの種においても多型は存在しており、一定の割合で種子繁殖を行い、集団・遺伝的多様性を維持しているものと考えられた。本年度の野外調査で得られたサンプルは沖縄本島周辺の海草藻場を網羅するもので、これらを解析することで海草藻場の維持メカニズムの解明に寄与できるものと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗が遅れている理由は、野外調査が予定通りに終了できなかったことである。予定調査地の幾つかは当初想定していたよりもアクセスが難しく、時間が必要であった。このため追加で調査スケジュールを組む必要が生じた。そのため実験・解析を全て終了させることができておらず、遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はより多くのエフォート(時間・労力)をこの課題の推進に当て、遅れを取り戻したいと考えている。少なくとも野外でのサンプル採集は終了しており、研究目的を達するための一つの段階は終了している。また、実験・解析を進める上での技術的問題は生じておらず、スケジュール以外の研究計画の変更は必要なく、研究目的を達成できるものと考えている。
|