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現代社会において地球環境保護の理念と技術が普遍的な価値として位置づけられるなか、ブータン国は経済的な指標でみれば最貧国の一つながら、君主制の下で伝統文化および自然環境の保護を経済発展に優先させるとし、意識的な政治選択を実施してきた数少ない国である。しかし、近年の急速な民主化への動きは、絶対王政下での厳格な森林管理を環境保全成功の秘訣としてきたブータン国の属性を大きく変えつつある。本研究では、民主主義の制度化プロセスの下で国の環境政策および人々の(自然観を含む)価値体系が変容していくプロセスを描くことを目的としていている。この目的を達成するため、初年度はまずブータン国の民主化プロセスおよび現行の環境・開発政策の概要と特徴をとらえ、そのうえで村落社会における価値変容の契機を見出そうと試みると同時に、南アジア地域および世界における環境政策の歴史的変遷のなかに位置づけるべく英国での資料調査を実施した。英国では大英図書館を中心に調査を実施したほか、英国各地の研究者との学術ネットワークの形成に努めた。ブータンではウゲン・ワンチュック環境保護センターの協力を得て自然公園内での現地調査を実施し、村落での集中的な聞き取り調査を行うとともに、首都ティンプーでは関係機関でのインタビューと資料収集を行った。今回の調査では、住民参加型の環境管理の手法としてコミュニティフォレストリー導入のプロセスを民主化および分権化政策との関係で考察しようと試みており、今後の調査でもこのトピックの考察を継続していく予定である。そのうえで、さらにグローバルな森林管理の傾向と関連付けて考察を深めていきたい。
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