本研究はアフリカのサバンナ地域における植生の変化について住民による資源の持続的利用という観点から理解することを目的としている。具体的には(1)地域の植生が生業やマクロな社会・経済状況と関連していかに変化しているか、(2)住民が状況に応じて植物利用の技法や、それをめぐる社会制度をいかに改変しているか、(3)在来の資源利用・管理とマクロな環境保全政策との効率的な接合の可能性を検討する。 本年度は、上記(1)と(2)に関連する研究を、セネガル共和国の中西部に暮らす農耕民セレールの社会を対象として実施した。その内容と成果を以下に列挙する。 1-1 現地調査の実施:4月22日から25日かけて現地調査を実施した(本調査にかかった旅費および滞在費は本助成が交付される以前に受けていた民間団体による研究助成費-平成20年11月から平成22年5月末-を用いた)。 1-2 現地調査の内容:19世紀初期に形成され、以降綿密に維持されてきたマメ科の樹木Faidherbia albidaからなる農地の植生が、今日どのように利用されているのかについて、(1)飼料としての役割、(2)燃料としての重要性の観点から定量的に調査した。さらに、(3)F.albidaの胸高直径や樹冠サイズを計測し、それをこれまでに得ているデータと比較した。 1-3 現地調査の結果:調査の結果、(1)近年、急激な人口増加や、人びとが主要な現金収入源である家畜販売を活発化しているのに伴い、飼料や燃料となるF.albidaへの依存度を高めていること、(2)だが同時に、人びとは本種の採集方法や制度を精緻化し対応していることが明らかとなった。 2 成果の開示:以上の結果は学会発表や、自ら企画・運営したシンポジウムにて報告した。 3 成果の重要性と今後の課題:F.albidaがもつ意味を部分的には把握できたが、その持続性を検討するうえでは今後も現地調査が要される。また、成果を学術論文にまとめることが望まれる。
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