研究課題/領域番号 |
22710249
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平井 將公 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任研究員 (80570845)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アフリカ / サバンナ / 人為植生 / 在来技術 / 制度 / 資源利用 / 生業 / 社会変容 |
研究概要 |
本研究の目的はアフリカのサバンナ帯における人為植生と地域住民の生業変化との相互関係を解明することである.すなわち(1)地域社会の人為植生が生業やマクロな社会・経済状況といかに関連し,どのように動態しているのか,(2)その過程において住民が状況に応じて植物利用の技術やそれをめぐる社会制度・社会関係をいかに改変させているかを分析し,(3)在来の資源管理とマクロな環境保全政策との接合の可能性について検討する.2011年度に引き続いて本年度は上記(1)(2)に関する現地調査をセネガル中西部のセレール社会を対象として実施した.セレールの人々は自給作物の肥料や現金収入源である家畜の飼料,そして燃料を効率的に供給しうるFaidherbia albidaが優占する植生を農地のなかに古くに形成し,維持してきた.その植生管理の現状を把握するために樹木サイズの継続測定を実施したところ,枝が飼料や燃料として高い頻度で切られる調査村では同種の胸高直径に肥大した形跡がまったくみられなかった.他方,枝がほとんど切られない村では旺盛に肥大していることが明らかになった.これまでの調査から,人々がこの木の枝葉を飼料や燃料として採集する際,樹勢の持続する範囲内に採取量を留めていることが示唆されていたが,今回の結果はそれを裏付けるものとなった.調理燃料の採集に関する現地調査も実施した.すべての土地が農地とされているこの地域にはFaidherbia albida 以外に手頃な燃料は存在しない.しかし,それも近年の人口増加から欠乏状態にある.このことから女性は同種の枝に加えて樹皮を採集するようになっていた.この樹皮の剥ぎとりは樹木に枯死をもたらす可能性が高い.その状況を2010年度から継続して記録しているが,今回の結果からは女性が樹皮の剥ぎ取りをほぼ抑止していることが明らかになった.その背景を今後追求する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,セネガルのセレール社会を対象とした集約的調査を実施している.その一方,本研究では,セネガルと同様の環境にある他のサバンナ地域でも集約調査を実施し,セレール社会との比較検討をとおした人為植生と農村社会との相互関係についての理解の深化に努める予定であった.だが,研究員の職につき,本研究のエフォートが低下したこと,さらには予算不足から他地域での調査が停滞している状況にある.その不具の解消にむけては,共同研究会を主催しており,総合的にみて本研究はおおむね順調であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年もアフリカの人為植生の地域間比較をテーマとした研究会を開催し,エフォート低下にともなう現地調査を補填するように努める.また,これまでに蓄積したデータ分析を進め,学術論文の形で成果を公表していく.
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