研究概要 |
今年度の第一の目的は,これまでセネガルのセレール社会で進めてきた現地調査のデータをまとめあげることにあった。これまでの現地調査からえられたデータは次の5つにわけられる:(1)人為植生の生態、(2)人びとの生業実践、(3)生業実践における樹木の利用技術、(4)樹木の利用にまつわる慣習的社会制度、(5)人びとの生業や樹木利用をとりまくマクロな自然、社会、経済状況。これらのデータの分析はほぼ完了し、今後、論文の形にまとめあげていく予定である。 今年度の第二の目的は、他の地域社会でおこっている人為植生の動態を把握し、セネガルのセレール社会と比較することにあった。この観点から、カメルーン東南部の森林地域に渡航し、植生、生業および地域社会を取り巻く社会・経済状況の変化について調査した。そのデータは現在取りまとめ中であるが、セレールが暮らす地域に比べて、同地域の植生は生物多様性が非常に高いうえに、人口密度も極めて低い。生業と植生・樹木とのかかわりが強い点で両地域は共通するが、セレールが特定の樹木を集約的に利用するのに対し、カメルーン森林域の人びとは多様性そのものに依存した生計をいとなんでいると思われた。今後、このような植生・樹木の利用に着目した地域間比較を進めていく。
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