研究課題
地下水のヒ素汚染が問題となっているバングラデシュとインドのウエスト・ベンガル州において,地域に根ざした持続可能な水利施設導入の計画方法論を構築することを目的として研究を進めた.研究期間において,達成されたことは以下の通りである.1) 外部機関の介入の度合いが女性の水資源選択行動に影響を与える要因を,アンケート調査および統計分析(共分散構造分析)を用いて明らかにした.2) 離散選択モデルを用いて,インドとバングラデシュの対象地域ごとの水資源選択行動モデルを作成した.この際,村落空間をメッシュで分割し,Space Syntax理論を用いて,このメッシュごとの視認性を解析し,これをモデルの変数として用いた.これより,ヒ素のリスク回避に対して,心理的文化的な要素(水汲みをする役割を担う女性が人の目にさらされたくないと思う心理障壁)がどのように影響を及ぼしているか,またその地域差について明らかにした.3) アンケート調査から,対象地域の社会ネットワークを同定し,これにより表現される社会集団の関係が個々人の水資源選択行動に及ぼす影響を明らかにした.4) 現地の飲料水ヒ素汚染問題解決のために,有効と考えられる代替水源のタイプと設置場所,導入後の維持管理のためのコミュニティの所属分類,および代替技術の利用を持続的に行ってもらうために必要な意識啓発に資するワークショップの開催方針などを,仮説という形で明らかにした.現在は,これに基づいた計画で実際にインドの対象地域に水利施設を建設し,仮説を検証しようとしている.ここで仮説が検証され,導入した水利施設が住民の共同管理のもとで持続可能的に利用されていることが示されれば,当該の計画方法論が他地域でも機能する可能性があり,より効果的効率的な開発援助に資する研究成果となり得ると考えられる.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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国際開発研究
巻: Vol. 21, No. 1/2 ページ: 103-114