本年は、マニラにおけるムスリム女性の経済活動、及びミンダナオにおけるムスリム女性の宗教活動について夏期に調査をおこなった。また、春期には、湾岸諸国においてイスラームに改宗するフィリピン人女性の改宗の背景や労働環境について調査した。 マニラのムスリム・コミュニティでは、毎週水曜日の午後2時からPMDF(Philippine Microfinance Development Fund)の週―の定期会合があり、調査においては、そこに参与し、PMDFに参加している女性たちと出会い、聞き取りをおこなった。 ミンダナオのサンボアンガ市には、タァリム(女性たちのクルアーン勉強会であり、タブリーグの女性版とも認識されている)に参加するほか、勉強会の主催者に対して、その動機、背景、民族、信仰行為の実践などの聞き取りをおこなった。過去3年ほどの間に、サンボアンガのタァリムは1つから3つに拡大し、それぞれの勉強会に参加する女性も特定のムスリム民族から、異なる民族の女性やイスラームに改宗した女性も増えたことがわかった。 これらの調査から、今日、ムスリム社会のなかで中東・湾岸諸国で改宗し、帰国した女性が積極的に活動をしていることがうかがえた。そこで、春期の湾岸諸国での調査では、アラブ首長国連邦において、イスラミック・センターとよばれる新規イスラーム改宗者が学ぶ施設で参与観察および聞き取りをおこなった。フィリピン女性については、主に婚姻による改宗が多いことがわかった。ただし、フィリピンに帰国した後、そうした改宗女性の大半がキリスト教徒に戻り、また残りが積極的なイスラーム実践者になることも明らかとなった。
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