本研究は、マニラ・ムスリム社会の政治、経済、宗教に焦点をあて、多民族および多宗教的状況におけるムスリム女性のネットワーキングの現代的諸相を把握し、その活動が当該社会の性差におよぼす影響を明らかにすることを試みた。3つの側面からみたとき、政治分野では、特に民族ムスリムが中心となって活動する傾向が強かったのに対し、経済活動や宗教活動では、イスラーム改宗女性の活躍が顕著であった。それぞれが歩んできた背景は異なるが、彼女たちの活動は互いに可視的であり、コミュニティに暮らす女性たちに影響を及ぼしている。多民族・多宗教状況にあるからこそ、女性の生の多様性がコミュニティに認められ、社会を動かしていく力になっている。
|